本日の車物語は「夏雨」

Here we go！

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雨が降っていた。

夏の合間の雨は打ち水のごとく気持ちがいいものだ。
しかしよりによって出かけに振り出すとは間が悪い…

キーレスでロックを解除しながら駆け寄り僕はミニクーパーに乗り込んだ。

信号待ちの交差点、向こうのカフェに雨宿りをしている

彼女を見つけた。

彼女を見た瞬間、左手の中指が痛んだ。

乗せようか？
いや待て！

別れたのは170日前のことだった

「あなたって冷たい人だったのね！」

「ちょっと待ってくれ、そんな言い方はないだろう！」

さよなら！を言い放ちクーパーのドアに怒りをぶつけた彼女。

わけもわからず彼女を引き止めようとした不幸な左手中指はドアに挟まれ紫色に腫れ、

やがて爪に血まめを作った。

爪は1日に0.1mmのびる
爪の成長と共に血まめは上にあがっていった。

爪は180日で生え替わる
あと10日ほどで爪切りでパチッ
元の白い爪に、そして恋の傷ともお別れだ。

気づいていない、通り過ぎよう！

ガラス越し、雨に濡れた頬をハンカチで拭う彼女…

涙？

170日前の夜がフラッシュバックする。

やがて信号が青になった

不幸な左手中指は、走り出したクーパーのハザードを点灯させ

カフェの路肩で助手席のドアを押し開いた。

雨が降っていた。

クラッチバッグで雨をよけながら駆け寄り彼女は笑顔でミニクーパーに乗り込んだ。

Escape and become free.